岡山県のイ草産業は、古くは量・質ともに日本一の産地です。現在でも加工技術の高さは全国でも有名です。伝統の技法で丹念に織り上げられた花ござのほか、座布団、スリッパ、花瓶敷きなどの小物も人気があり、お土産におすすめです。
2024.03.21水に恵まれた「晴れの国・岡山」は、イ草製品づくりに最適の地
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イ草は山野草の一種で、古くから日本全土に分布していました。現在の倉敷市や早島町でその栽培が盛んになったのは、江戸時代に広大な干拓地が開発され、塩害に強い綿とイ草の栽培が奨励されたのが発端です。
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イ草を畳表やござなどに加工する際には、色合いのむらをなくして輝きを高め、劣化を抑制し、丈夫にするための「泥染め」が施されます。乾燥機がなかった時代には、「泥染め」したイ草を天日干しによって乾燥させていたため、雨の少ないこの地では、イ草の栽培とともにその製品化が発達してきたのです。
明治期には日本を代表する輸出品、倉敷のイ草製品
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「船中の神功皇后に、里人が野草を編んだ敷物を献上した」。倉敷市松島の両児(ふたご)神社に残る伝承は、はるか神代の時代からこの地で敷物づくりが行われていたことを示唆しています。江戸時代の書物には、備中国倉敷周辺(現在の倉敷市や早島町あたり)がイ草産地として記され、明治時代になると岡山のイ草製品製造は一気に発展します。
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その原動力となったのが、織機の改良や染色技術の開発を行った倉敷市生まれの磯崎眠亀(みんき)でした。彼が発明した、美しく緻密な模様を織り込んだ花莚(はなむしろ)「錦莞莚(きんかんえん)」が世界に認められたのを皮切りに、岡山の花莚は日本の重要輸出品へと成長していったのです。
伝統の品からモダンな品まで。現代の暮らしにも馴染むイ草製品
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岡山でイ草製品を手掛ける業者の多くは、早島や倉敷を中心とする県南部に集まっています。近年、量的には少なくなったものの、加工技術の高さは全国でも有名です。丹念に織り上げられた岡山のイ草製品は、その伝統の技法を今に伝えています。
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脈々と続く歴史と確かな技術に支えられた岡山のイ草製品。近年は、伝統的な花莚のほか、コースターやスリッパ、テーブルセンターやランチョンマット、パソコン関連グッズなど、現代の暮らしに溶け込む実用品も数多く作られています。イ草の特徴である調湿作用などの働きも手伝い、私たちの暮らしをより快適なものにしてくれます。その清々しい香りとモダンなデザインが心地よく暮らしを彩ります。